舞妓になって5、6年経ち20歳ごろになると、そのまま芸妓になるのか、花街を去るのかを決める時期になります。芸妓を選択すると、置屋から自立して、舞踊や三味線、唄などの芸と接遇のプロとして自分の力で身を立てる厳しい「自前」の現実が待っています。いよいよこれまでの真価が問われるわけです。周りから「そろそろどうや」と声がかかり、その決心をした舞妓が芸妓になることを「衿替(えりかえ)」といいます。それまでの舞妓の赤い衿から白い衿に替えます。衿替間近になると舞妓は、髪型をおふくから「先笄(さっこ)」という昔、結婚したばかりの女性がする髪型に結い替え、お歯黒をつけて2週間ほど過ごします。これは、結婚の許されない芸妓なので、その前にお嫁さんになる疑似体験をさせた名残ではないかという説もあります。先笄の髷をお母さんに切ってもらい、衿替でそれまでの赤いちりめんの衿は白に。真新しい鬘をかぶり黒紋付(もんつき)を着てお茶屋など関係先にあいさつ回りする姿は、すっかり成熟した美しさに包まれます。